10月13日(金)、東京マラソン財団チャリティ RUN with HEART寄付先団体およびLGBTQ+インクルーシブな大会運営を目指すための協定締結先である「NPO法人プライドハウス東京」主催(協力:東京マラソン財団)により、東京レガシーハーフマラソン2023(開催:10月15日(日))参加ランナー及びボランティアへ向けた「LGBTQ+勉強会」がハイブリット形式(対面/オンライン)で開催されました。
今回の「LGBTQ+勉強会」は2部構成
■LGBTQ+の基礎知識と当事者アスリートとしての経験
講師は現役ラグビー選手であり、プライドハウス東京アスリート発信チーム理事の村上愛梨さん。LGBTQ+の基礎知識やご自身の経験をお話しいただきました。
■ゲスト対談 M高史×村上愛梨
皆さん、日本人口の約5~8%の人が「LGBTQ+」であることをご存知でしょうか。
この”約5~8%”は、人口の左利きの数と同等のパーセントとのことです。
皆さんの周りに「LGBTQ+」の当事者の方はいらっしゃいますか。もしかしたら「少ない」「居ないかも」という方が多いと思います。
実際には「少ない・居ないかも」ではなく、「見えにくく、居ないのではなく、言えない 」ということを、村上さんから教えていただきました。
そもそも「性」のあり方を決める要素には、出生時につけられた”男“か”女“かではなく、「性的指向」「性自認」「性別表現」「身体構造における性的特徴(生まれた時につけられた性別)」の4つがあります。そのため、人によって組み合わせがある多様なもので、『人の数だけ性のあり方は存在する』ということになります。
基礎知識が非常に大切だと感じているので、一部ここまでのテキストで記載されている内容もありますが、レポートの一番最後に紹介させていただきます。基礎知識を見ながら皆さんも「性」ついてぜひ考えてみてください。
勉強会ではLGBTQ+の基礎知識だけではなく、村上さんご自身の経験※をご紹介いただきました。お話を聞いて、セクシュアリティに違和感を感じ始める時期は、人それぞれであり、その成長過程で「LGBTQ+」を知らない状態でいることが、どれだけ危険であるかを感じました。(ゲスト対談でも、M高史さんも仰っていました)
※村上さんのエピソードは、本レポート内の下部に記載しています。
LGBTQ+の理解とあわせて、私たちが気を付けなければいけないことは「アウティング」。アウティングは、本人の同意なしに、他の人が勝手にその人の性的指向や性自認を周囲に伝えてしまうことです。
性の多様性は、個人のアイデンティティであり、誇りを持っていいことです。
ですが、まだまだ社会に偏見や差別があるのでその人の性自認や性的指向を第3者が勝手に伝えてしまうことで、居場所を奪い追い込むことにもなってしまいます。
ただ、性には”多様性”があることを義務教育のうちに学ぶ環境が整っているとはいえず、教科書にLGBTQ+に関する内容を教えるか否かは各学校の判断に委ねられています。
学校で難しい場合、親もしくは周りの大人から子ども達に伝え、小さいころから理解を深められる世の中になっていくといいなと改めて感じました。
今回のLGBTQ+勉強会は、冒頭にもお伝えしたとおり、東京レガシーハーフマラソン2023に参加するランナー、ボランティア向けに開催されました。
マラソン大会なので、エリートの紹介時にはエリート選手”男子”・”女子”と紹介をしていますが、市民ランナーの皆さんは、ひとりのランナーとして大会に参加し、ハーフやフルマラソンの距離を楽しんでください。
ボランティアの皆さんは、更衣室やお手洗いについて質問があった場合、見た目でその人の性別を決めつけないことが大切となります。事前に両性別の更衣室やお手洗い、また誰でも更衣室(東京マラソン財団主催の大会の場合)をご案内できるよう、意識していきましょう。
また、大人になると男性・女性問わず、「〇〇さん」と呼ぶことが多いですが、子どもに対しては「〇〇君」「〇〇ちゃん」と呼んでしまうことが多いのではないでしょうか。
Mさんはお仕事柄、レースの実況をすることがあり、昔は「〇〇君」「〇〇ちゃん」と仰っていたとのことですが、最近は「〇〇選手」と呼び方を変えているそうです。Mさんのお話を聞いて、昔からの習慣を意識的に変える必要性に気付くことが出来ました。
6色レインボーは性の多様性を祝福する象徴です。6色のレインボーを身につけることでLGBTQ+当事者の味方(アライ)であることを表明することができます。アライであることを表明する方が増えることで、LGBTQ+当事者の方が「自分らしくいても大丈夫」と感じられる空間をつくることができます。また、プライドハウス東京さんにも相談する場所があるので、一人で抱え込まずにこういった環境を活用してください。
▼プライドハウス東京
https://pridehouse.jp/

《村上愛梨さんの当事者アスリートとしての経験》
・中学生/バスケットボール時代の始まり
セクシュアリティへの違和感を感じ始めた。バスケットボール部の先輩・後輩を人として大切にしすぎてしまう。「LGBTQ+」という言葉は知らなかったが、違和感だけを感じていた。
・高校生/バスケットボールで進学
アウティングを経験
初めて彼女ができ、彼女は同じバスケットボール部の仲間だった。
ある日突然バスケットボール部の仲間から呼び出しを受け、その中には彼女もいた。
呼び出しをした子から「その子と付き合っているのであれば部活を辞める」と話を受けた。「なんで知っているの?」「なんで辞めることになるの?」と突然のことで頭が真っ白になった。その場では「付き合ってないよ」「違うよ」ととっさにその場を逃げた。
その後も、「パスが強かったり」と周りからの当たりが強まり、とても肩身の狭い思いを経験した。
子から親へのアウティング
自分から両親へセクシュアリティを話すことはなかった。
子どもから話を聞いた別の保護者から母親に対して「愛梨って同性愛者なんでしょ?気持ち悪いよね」という事を正面から言われることが起きた。「(そのようなことを言う人を)全員訴えるよ」という事を口にするくらい強い母親に助けられた。
高校時代にアウティングを経験し、これからは「絶対に隠す。」と決意した。
・大学生/バスケットボール時代&クローゼット時代
自身のセクシュアリティは絶対に隠す。と決め、バスケットボールに集中し、目標としている実業団入りを目指したクローゼット時代。
・実業団/バスケットボール時代(秋田銀行)
ラグビーチケットを頂いたことをきっかけに観戦へ。「人と人が当たる音」を聞き、ラグビーで日本代表を目指す事を決意。
・26歳でラグビーの世界へ
オーストラリア人の監督との出会い。選手一人ひとりに声をかけ、皆を家族の様に接してくれ、全てを受け入れてくれた。後にここでの監督との出会いが、カミングアウトするきっかけとなった。
・30歳の誕生日を節目に…SNS上でカミングアウト。
プライドハウス東京のサポートも受け、メディアを通じてカミングアウト。
現在では、プライドハウス東京の理事として、アライアスリート研修や企業研修に登壇している。日本ラグビーフットボール協会がプライドハウス東京と連携しながら取り組みを進めていることもあり、LGBTQ+に関する幅広い取り組みをラグビーとも関連しながら伝えていきたい。
最後に…
「アウティングを経験し、つらい思いもしたが、母親という強い存在があり今ここにいる事ができた。アウティングはとても危険なこと」だと、強くお話いただきました。
<LGBTQ+の基礎知識―用語集>
参考:プライドハウス東京「スポーツ界にアライ(ALLY)を増やそう」リーフレット(協力:公益財団法人日本オリンピック委員会)
■自分の性のあり方を決める4つの要素
①性的指向:恋愛感情や性的関心がどの性別に向くかということ[好きになる性]
恋愛感情を抱かないアロマンティック(Aromantic)、性的関心を抱かないアセクシュアル(Asexual)の方もいます。
②性自認:自分自身の性別をどのように認識しているか[こころの性]
性自認を女性 / 男性のどちらかとは認識していないノンバイナリー(nonbinary)の人もいます。
③性別表現:言葉遣いや服装、振る舞いなど、自分が表現したい性別
④身体構造における性的特徴:自分の性別に関わるからだの特徴
■SOGI(Sexuol Orientation&Gender Identity)
性的指向(Sexual Orientation)、性自認(Gender Identity)の頭文字を取った略語。性別表現(Gender Expression)も含めて、SOGIEと表記されるときもあります。SOGIEとはLGBTQ+当事者かどうかに関わらず、全ての人々の性のあり方を決める要素です。一人ひとりのSOGIEに関する権利を認めていくことが大切です。
※ここに身体構造における性的特徴(Sex Characteristics) を含めて「SOGIESC(ソジースク)」と言われることもあります。
■「LGBTQ+」とは?
レズビアン(Lesbian):自分が認識している性別が女性で、女性が恋愛対象の人
ゲイ(Gay):自分が認識している性別が男性で、恋愛対象が男性の人
バイセクシュアル(Bisexual):男性も女性も恋愛対象の人
トランスジェンダー(Transgender):生まれた時に割り当てられた性別と、自分が認識している性別に違和感がある人
クエスチョニング(Questionning): 誰を好きになるか(ならないか)や自分がどんな性別なのかを決められない、分からない、あえて決めない人
※クィア(Queer) のQとも言われます。自分が感じている性別や誰を好きになるのかが非典型で多数派ではない人のことを言います。
■「ALLY」とは?
同盟、味方などを表す言葉です。LGBTQ+の人たちの味方として一緒に行動する人たちのことを言います。
アライの輪を広げるために…
・必ず身近に当事者がいることを理解する。
皆さんの周囲にいないのではなく、気づかなかっただけです。テレビなどでよく聞く「ホモ」「おかま」「レズ」などは差別的な用語なので、使わないようにしましょう。
・自分自身の無意識の偏見に気づく
どんな性のあり方も大切にされなければなりません。「男らしさ」「女らしさ」を人に当てはめたり、「恋愛することが当たり前」「異性愛だけが恋愛の形」と決めつける言動はやめましょう。
・アウティングを絶対にしない
本人の許可なく、その人の性自認や性的指向を周囲に伝えてしまうことをアウティングと言います。
・アライであることを宣言し、アライとして行動する
レインボーマークを身につける。LGBTQ+の人たちを傷つける言葉を聞いた時は「その発言は良くない」と伝える、話題を変える、LGBTQ+の人たちの気持ちに寄り添うなどの行動をとることで、安心できる空間をつくる。