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2025年10月20日
【レポート】パラアスリート(車いすT53/T54)レース
第4回を数えた東京レガシーハーフマラソン2025は午前8時、車いすレースの部から開幕。曇り、気温19.1度、湿度60.0%という気象条件のなか、全23選手(男子18、女子5)が一斉にスタートしました。
男子は第1回大会から連勝中の鈴木朋樹(トヨタ自動車)が43分08秒で優勝し、4連覇を達成。序盤は鈴木、吉田、岸澤の3人で先頭集団を作っていましたが、5㎞すぎに後続が少し離れたことを機にペースを上げた鈴木がそのまま、圧勝しました。2位には昨年3位の吉田竜太(SUS)が45分43秒で、3位には同2位の岸澤宏樹(日立ソリューションズ)が46分13秒で入りました。
鈴木はシカゴマラソン出場(3位)後、約1週間でのレースで、「(内臓疲労など)少し身体のダメージがあり、きつい部分もあったが、連覇できてよかった。この大会のよい点はコース途中のすれ違いで、一般ランナーの皆さんが反対車線からエールを送ってくださるところ。車いす選手に対するリスペクトが感じられて嬉しかったし、(後半)気持ちが切れそうなときも、声援のおかげで最後まで走り切れた」と感謝しました。
連勝記録を伸ばしましたが、「このコースは東京2020パラリンピックと同じ。(同大会)代表というプライドを持って、今後も5連覇、10連覇していきたい」とさらなる積み上げを誓っていました。

2位に入った吉田は鈴木と離れた5km以降、3番手でレースを進めましたが、終盤の上り坂で仕掛けて逆転。「(岸澤の)ペースが落ちたので、チャンスだと思った」。鈴木と同じくシカゴマラソンに出場(7位)後のレースでしたが、マラソンを主戦場とする吉田がロードで培ってきた強みを生かしました。
岸澤は「序盤のスピードの上げ下げで、(力を)使ってしまった部分もあり、(終盤の)上り坂への対応ができなかった」と自己分析。2週間前にインドでの世界選手権でトラック2種目(800m、1500m)に出場後、今大会にはレーサー(競技用車いす)のタイヤをパンクしにくいタイプにするなどマラソン仕様に変えて臨んだそうです。「トラックからマラソンへの切り替えなど、いい経験になった。順位は落としたものの、昨年とは違う手応えもあった。」と前を向きました。
5選手が出場した女子は大接戦となりました。昨年2位の仲嶺翼(ミサトスイミングスクール)と同1位の土田和歌子(ウィルレイズ)がデッドヒートの末、52分14秒の同タイムでフィニッシュ。仲嶺が僅差で上回り、2大会ぶり2回目の優勝を果たしました。3位は1時間22秒で瀧村和美(日本オラクル)が入りました。
仲嶺は、「スプリント勝負になると思っていなかった。ああいう形のフィニッシュは経験したことがなく、もう粘って粘って粘って、最後まで出し切ろうとフィニッシュまで走り抜けた。勝ち切れて、本当にいい経験になった。これを活かしてまた次のレースでも粘り強い走りをしていきたい」と充実感をうかがわせました。
これまで、「上りは苦手」と話していた仲嶺ですが、昨年から用具やフォーム、トレーニング方法などまで、「全部を見直した。改造の最中で、まだすべて整ったわけではないが、苦手としていた(終盤の)上りで離されずについていけたのは1つの成果」と手応えを口にしました。

惜しくも敗れた土田は、「刺されてしまったが、デッドヒートで、久しぶりにすごく楽しいレースができた。スピードの上げ下げから得るもの、負けから得ることもいっぱいある。また頑張ります」と悔しさをにじませつつ、前を見据えました。
副島正純車いすレースディレクターは、「大きなトラブルもなくレースを終了できた。男子は鈴木選手が強さを見せた。吉田選手と岸澤選手はタイプが違うので、吉田選手は瞬発力を磨き、岸澤選手は長い距離を積んでもらうと、また面白いレースが見られるのでは」と期待を口にしました。
また、「今回は女子のレースが面白かった。仲嶺選手にはこの自信を次のレースにつなげてほしいし、土田選手にはまた取り返してもらえるよう頑張ってほしい」とエールを送りました。