NEWS
ニュース
2025年11月17日
第4回パラ陸上教室 in 国立競技場を開催しました!
【第4回パラ陸上教室 in 国立競技場】
走る人も、教える人も、支える人も、みんなが笑顔
10月19日、東京レガシーハーフマラソン2025終了後の国立競技場で、「第4回パラ陸上教室 in 国立競技場」を開催しました。この教室は障がいをお持ちの方もスポーツの聖地・国立競技場のフィールドに立ち、アスリートが感じた興奮や感動を体験することで次の成長を育み、新たな夢を目指せる機会の提供をコンセプトに毎年開催し、年々人気を高めています。
今年も71名の参加者が、「レーサー(競技用車いす)教室」「フレームランニング陸上教室」「チャレンジ陸上教室」の3つの教室に分かれ、経験豊富な専門の講師陣の指導のもと、陸上競技に挑戦しました。競技場には笑い声やかけ声が響き、初参加者もリピーターも分け隔てなく、仲間たちと楽しく競い合いながら、充実した時間を過ごしたようです。

■ さらなる成長に期待
小学生以上の車いすユーザーを対象とする「レーサー教室」では、パラリンピアンの花岡伸和さん(関東パラ陸上競技協会代表)らがサポートしながら、参加者が日常用の車いすから色とりどりのレンタル用レーサーへと乗り換えることからスタート。シートの高さや乗り心地なども体に合わせて調整し、こぎ方のコツなどを教わった参加者はそれぞれ走り心地を確認。その後はホームストレートを使って100m走に何度もチャレンジしました。
リピーターの小学4年生の女子は、「この間の世界陸上をテレビで見ました。棒で跳ぶやつ、すごかった!」と同じ国立競技場での教室を喜び、「レーサーで走れることは少ないので楽しかった。もっと速く走れるようになりたい」と目を輝かせていました。また、2年ぶりに参加したという高校3年生の女子の母親は、「高校時代最後の思い出にと思い、参加しました。楽しそうに走っている娘を見て、親も嬉しく思います。普段はおっとりなのに、スポーツでは負けず嫌いな様子を見せるのも頼もしく感じます。」と、目を細めていました。
今年もゲストコーチとして東京レガシーハーフマラソン2025を走り終えたばかりのパラアスリートも多数参加。車いす女子優勝の仲嶺翼選手は、「教室には初めて参加しましたが、ウキウキしています。子どもたちは想像していたより何倍も速くて活発だし、レーサーの操作も上手。この子たちが成長して、日本を背負ってくれたらと、楽しみです。」と笑顔で話しました。また、先輩アスリートとしてサポート参加した酒井健汰選手も、「レーサーに乗ってできることが増えて笑顔になっていく子どもたちを見て、やりがいを感じています。ここから僕たちを脅かす世代として成長し、ゆくゆくは車いす競技を引っ張ってくれる選手が生まれてくれたら嬉しい。」と、後輩たちの成長を願っていました。


■ 新競技にたしかな手応え
脳性まひのある人を対象にした「フレームランニング陸上教室」ではフレームランナーと呼ばれる用具を使って走ります。安定感のある3輪の自転車に似た乗り物ですがペダルはなく、足で地面を蹴って動かします。まだ、日本に入ってきたのが数年前という新競技で、教室には競技初挑戦の人も多かったようです。その一人、都内在住の19歳女性の母親は、「学校を卒業すると運動機会が減ってしまうので、こういう機会はありがたいです。風が気持ちよく楽しそうだったので、また来年も参加したいです。」と話しました。
26歳男性は愛知県から初参加。母親によれば、普段はボッチャに取り組んでいて、その友人から「フレームランニングを始めた」と送られてきた動画に刺激され、自ら友人に連絡を取ってこの教室を知ったそうです。講師を務めた日本パラ陸上競技連盟の手塚圭太さんによれば、「初めてなのに、ついていけないくらいスピード」でトラックを何度も往復したようです。発話は難しいという男性は、質問に、はい(目を閉じる)、いいえ(首を振る)の形で答えてくれました。「風は気持ちよかったですか?」には即座に目を閉じ、「もっと乗りたいですか?」には頬も緩ませながら、目をさらにギュッと閉じました。新競技と出合えた喜びが伝わってきました。
講師の平松竜司さん(日本パラ陸連)は最後の挨拶で、「皆さんと一緒に、この競技を少しずつ広げていきたいです。ついに、ロサンゼルス大会からパラリンピックの正式種目にもなります。夢も広がりますね」と、参加者に語り掛けました。

■ 一歩を踏み出す大切さ
知的障がいのある方をはじめ、障がいの有無にかかわらず、誰もが参加できるインクルーシブなプログラムの「チャレンジ陸上教室」は今年も、ヤマダホールディングス陸上競技部の皆さんがコーチを務めました。参加者は2つのグループに分かれ、東京2020オリンピック日本代表の安部孝駿さんらの指導のもと、動き作りに励み、仲間たちと競い合ったりしながら、「かけっこの楽しさ」を体験しました。


「娘は2回目の参加です。」という都内在住の父親は、「同じような年齢や障がいのある子どもたちが一緒に何か活動をすることは成長に欠かせません。それに、私たち親同士が時間を共有できることも大切。そういう意味で、この教室はとても素晴らしい機会だと思います。」と話していました。
千葉県内から約20人のグループで初参加したという保護者の方たちにもお話を聞きました。グループは障がいのある子どもの体操教室の皆さんでした。「娘は運動が心から好きなわけではありません。『できない』という思いが先に立ってしまうからです。それに知らない場所は警戒するので、少しでもイメージが湧けばと、世界陸上の中継番組を見せて、『ここに行くかもしれないよ』と伝えていました。おかげで、それほど緊張感もないようだし、みんなと走ってニコニコしているので安心しました。あとで感想を聞くのが楽しみです。」と喜んでいました。また、他の保護者の方も、「いろいろな人と触れ合い、一緒に何かをする体験はなかなかできません。先生のお話を聞いて動きを真似ることも、一つひとつが経験です。みんな楽しそうなので参加してよかった。」と、うなずいていました。
コーチ陣の中には、日本陸上競技選手権大会男子走り幅跳び入賞などの実績をもち、今季21年間の現役生活にピリオドを打ったばかりの小田大樹さんもいました。「初めて参加しましたが、参加者の笑顔が印象的でした。スポーツを、陸上を純粋に楽しんでいる姿に、僕自身が陸上を始めた小学校3年生の頃に重なって、とても有意義な時間になりました。国立競技場には選手として何度も立ちましたが、また別の形でこの聖地に関われるのは嬉しい。これまでの競技経験を活かせていけたら」と、手応えを語りました。

今年は東京レガシーハーフマラソン2025 PRサポーターのパラリンピアン、谷真海さんもゲスト参加しました。自身も走り終えたばかりのレースについて、「東京の街を走れるなんて、ぜいたく! トップクラスの選手から一般ランナーまで、いい雰囲気の中で走れる貴重な大会でした。」と振り返った谷さん。このパラ陸上教室も関連イベントとして恒例開催されていることに、「パラ陸上挑戦に一歩を踏み出せる機会は少ないので、とても貴重な機会ですね。『出会いと機会』は子どもたちにはとても大切。私も走っていなかったら、もっと違う世界を生きていたかもしれないですから。」と、大会がもつ多様な意義や魅力にも感心していました。
ご参加くださった皆さん、コーチやサポーターとして支えてくださった皆さん、ありがとうございました。また来年、パラ陸上教室でお会いしましょう!
<スポーツレガシー事業>
東京マラソン財団がスポーツを起点として21世紀の社会に、後世につながる「レガシー」を遺していきたいという想いから始めた事業で、東京マラソンおよび東京レガシーハーフマラソンチャリティを通じて寄付者の皆さまよりお預かりした寄付金を、アスリートの強化・育成、スポーツ施設などの環境整備、スポーツ大会の支援などに活用しています。
プロジェクトについては こちら よりご確認ください。