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SPECIAL INTERVIEW

スペシャルインタビュー

TOKYO LEGACY HALF 2025

パラリンピアン谷真海が語る、ハーフマラソンで見つけた『新しい自分』

東京レガシーハーフマラソン2025 PRサポーターはじめ、車いすハーフマラソンのスペシャルスターターを務め、さらにレースにも出場して見事2時間4分13秒で完走するなど大会を盛り上げていただいた、パラリンピック4大会出場(アテネ・北京・ロンドン・東京)の谷真海さんにインタビュー。ハーフマラソンを走り終えた感想や思い出の場面、また今回の挑戦を通じて新たに得られた気づきや感じられた自分自身の変化、これから新しい挑戦に向かう人たちに向けてのメッセージなどをいただきました!

「もう一歩踏み出してみようかな」と
チャレンジ

ハーフマラソンは人生で3回目の挑戦になります。2018年、19年に1度ずつ走ったのですが、その後は出産などもあってこんなに長い距離は走っていなかったので、今回はもう初めての挑戦のような感覚でした。大会を振り返って、やっぱりフィニッシュできて良かったなという達成感、そして、すごくたくさんの笑顔やエネルギーに触れることができて楽しかったなという思いがあります。

普段はストイックに競技としてのトライアスロンに打ち込んでいるのですが、東京レガシーハーフマラソンのような大会は雰囲気を楽しめるのが一番ですよね。競い合うのではなく、みんなで一緒にフィニッシュを目指していくということが魅力的です。特に今回は舞台が東京ということで、ハーフマラソンだったらチャレンジしてみたいという気持ちで参加しました。

不安や迷いはもちろんありました。これが1年前だったら難しかったかなと思います。でも、産後3年経ったところだったので、「もう一歩踏み出してみようかな」という感覚になれました。

あらためて感じた
“スポーツの力”の素晴らしさ

トライアスロンをやっているとはいえ、やっぱりハーフマラソンの20kmという距離は高い壁になります。大会当日を迎えるまで、そして走り始めてからも不安はありました。

また、義足のトラブルというのは練習中でも試合中でもあることで、直前のトライアスロン大会で足を痛めてしまい「あぁ、やっちゃったなぁ……」と。でも、これは想定内で1週間あればリカバリーできるかなと思っていましたが、予想以上に回復が遅れてしまい不安な気持ちでEXPOに向かいました。

実は、EXPOに行くまでは「もしかしたら走れないかも」と思った時も、正直ありました。でも、大会2日前の金曜日に「東京レガシーハーフマラソンEXPO 2025」に行ってランナー受付を済ませた時に、お祭りのような楽しさを感じてすごくワクワクしてきて、「これは走るしかない!」と思ったんです(笑)。こんなにもたくさんの人が走るんだなと思うと、私も皆さんと一緒に走りたいという気持ちが強くなりました。

それと、やっぱりスタート・フィニッシュ地点でもある国立競技場に来るとグッと気持ちが高まりますよね。私は東京2020パラリンピックの開会式で日本代表選手団の旗手をさせていただき、笑顔で手を振りながら入場したのですが、無観客での開催だったのでものすごく寂しさを感じていました。

東京2020大会に関して私は招致活動から携わらせていただいたので、“スポーツの力”というものを皆さんに伝えたいという思いもあったのですが、新型コロナ禍での開催ということもあり、反対の声やスポーツに対するポジティブではない意見も多かったと思います。そういった流れで、私自身も“スポーツの力”に対して疑問に思ってしまうところもありました。でも、9月にここ、国立競技場で開催された東京2025世界陸上が素晴らしかったですし、この東京レガシーハーフマラソンを通じても「やっぱりスポーツって素晴らしいものだな」と、純粋にそう思えた時間でした。

東京2020大会で目指した世界がここにあった

東京レガシーハーフマラソンのコースで思い出に残っているのは、まずはスタートですね。自分のブロックに入るまではランナーの皆さんをお見送りしていたのですが、とにかく競技場の一体感が素晴らしいです。華やかでありながら、一般のランナーの皆さんは「今から走るんだ」という楽しさ、笑顔にあふれていました。皆さん、この瞬間を楽しんでいるんだなという雰囲気が印象的でした。

もちろん、東京の道路の真ん中を走るというのは初めての体験でした。どちらかというと、コース自体は普段通っている場所だったので「あ、分かる、分かる」という感じだったのですが、やっぱり走っている時に見える景色が全然違っていて、水道橋から日本橋に向けて走っていく時など「道路の真ん中から見る景色ってこんなに違うんだ」と感動しました。

ほかのランナーさんやボランティアさんとの触れ合いもめちゃめちゃありましたよ。名前が書いてあるゼッケンをつけさせていただきましたし、私は義足だからパッと見で分かりますので、「真海さん、頑張って」とか「谷さん、速いね!」とか(笑)、そういったお声がけをたくさんいただきました。そのたびに私も笑顔になるので、それがフィニッシュまで行けたモチベーションの大きな一つですね。

そして、やっぱりこれがマラソン大会ならではの良さだと思いました。特に東京レガシーハーフマラソンは色んなランナーが参加していますよね。トップのエリートランナーから市民ランナー、車いすまで色々な人が一緒に同じフィニッシュを目指すというこの感覚は素晴らしかったなと思います。

まさに東京2020大会に向けて目指していた世界というものを実際に一つのマラソン大会の中で感じられた時間でしたね。本当にその世界観を目指して、途中で疑問に思ったりもしながら、ようやく「これがやっぱり一番に目指す世界。スポーツを通じて色々な人が高め合って、尊重し合って、ゴールを目指していく世界が理想だよな」と感じました。


谷真海さんの「#レガハが私を変えたこと」

最初に東京レガシーハーフマラソンに挑戦すると決めた時に、SNSの動画を通じて「一歩踏み出す勇気を皆さんにも感じてもらえたら」ということをお話させていただいたのですが、ハーフマラソンは私にとっても大きなチャレンジでしたし、勇気がいるものでした。でも、新しい挑戦を通じて新たな出会い、感動をもらえたなと思っています。今回の挑戦は自分自身の世界観を広げてくれるものだったなと思いますね。

普段の自分自身の生活や競技だけでは感じられないような感動、スポーツの楽しさ・素晴らしを感じられましたし、とにかく大勢の人たちと触れ合える時間が本当に貴重でした。今はもう一歩広い世界に飛び出したという感じがしていますね。これを経験していなかったら、競技を終えてまた走り続けるということをしなかったかもしれないですし、また新たな楽しみを見つけられたかなと思います。


車いす部門のスターターも務めさせていただきましたが、もう恐縮すぎて……自分でいいのかなという気持ちがありつつも、大変光栄な機会をいただけたなと思います。車いすランナーの中に知っている選手も多くいて、その選手たちの集中した表情などからすごくエネルギーを感じたのですが、自分がスタートする時よりも緊張していました(笑)。

障がいのある子どもたちと
スポーツの出会いは大切な時間

また、完走した後にはパラ陸上教室も見させていただきました。自分自身は参加していた子どもたちより年齢が上の大学生の時に足を失ったのですが、当時は義足で走ることができるパラ競技の世界を知りませんでした。「もうスポーツはできないんだ」と落ち込んだ時期でもありました。でも、その後に義足で走ることができるんだという喜びを知ることができて、新しい世界に一歩踏み出すことができたんです。パラ陸上教室に参加する子どもたちの姿に当時の自分の気持ちや姿が重なり、自分の人生の転換点を思い出しました。


障がいのある子どもたちにとってのスポーツはすごく勇気のいることなのですが、とても意味があることなんです。スポーツを通じて目標ができたり、出会いがあったり、それこそ世界を広げてくれるんですよね。そうしたことを自分自身も振り返りながら、この子たちがスポーツを通じて自分らしさを見つけて、その後の楽しい人生の一歩になるといいなと願う気持ちも強かったですね。走っている子どもたちも笑顔でしたし、それを見守っている保護者の皆さんも含めて笑顔だったので、すごく良い一歩だなと思いました。

東京レガシーハーフマラソンは大会前も後も色々な教室を実施されていて、すごいなと思いました。ランナーだけではなくて、こんなにも多くの人たちに走る喜びと国立競技場での体験を提供していただいて、ものすごくありがたいですよね。スタッフの皆さんは準備が大変だったと思うのですが、素晴らしい時間だったなと思います。

また、こうした時間に意味を感じるからこそ、多くの車いすランナーが残って教室の様子を見ていたんだと思います。そうした機会の大切さや、その時の触れ合いがその子たちの5年後、10年後に影響してくるということを皆さんが知っているので、そういった時間を大事にしているんだなと思いますね。

新しい一歩、
挑戦は常に自分の世界を広げてくれる

“新しい一歩”というのは新たな出会いや感動を届けてくれるものだと思っています。また、目標が一つ明確になることによって1日1日の過ごし方、生活そのものがすごくポジティブになるという感覚があります。その新しい一歩や目標という意味でも、東京レガシーハーフマラソンはぜひ色々な方たちに走っていただきたい大会だなと思いました。
また、マラソンに限らず新しい一歩、挑戦というのは常に新しい自分自身の世界を広げてくれるものだと思いますので、ぜひ何かしたいなと思っている人は一歩を踏み出してほしいなと思います。